「〇〇筋を鍛える」「△△△筋に力を入れて」
ダイエットやパーソナルトレーニング、筋トレをしたことがある人なら一度は聞いたことがあるセリフかもしれません。この何気ないセリフですが、筋肉に対する誤った解釈やカラダを動かす際の不自然なボディイメージを生む恐れがあります。
脳でのイメージと実際のカラダの間にギャップがある時、関節痛や怪我の発生などカラダに悪影響をもたらす可能性があります。
一生懸命やっているダイエットや筋トレで、カラダを痛めたことはないですか?
『カラダ全体と筋肉の関係』が分かると、ダイエットもトレーニングも楽しくなりますよ♪
1.筋トレって何? 筋肉って何なの?
2.重力に抗している時、使ってない筋肉はない。
3.私たちは張力で形が保たれている。「テンセグリティ構造の考え方」
4.筋トレ中に使える「カラダ全体のイメトレ」方法
5.まとめ
『筋トレ』こと筋力トレーニングとは、筋肉に負荷をかけて肥大化や筋力の強化を図ることです。負荷の掛け方は様々で、関節の曲げ伸ばしを繰り返すトレーニングや、体重や重りで荷重をかけたまま関節の動きを止めておくトレーニング等があります。
『筋肉』は大きく3つの種類に分かれています。①骨格筋、②心筋(心臓の筋肉)、③平滑筋(内臓筋)、この3つの中で自分の意識で動かせる筋肉は①骨格筋です。この筋肉は関節を動かしたり、支えたりする為に骨と骨の間に付いている伸び縮みするお肉です。(※顔の表情筋だけは骨と骨ではなく、皮膚についています。)今スマホを持つ手や肩や背中、パソコンを動かすその指先も筋肉の働きで動いています。骨格筋は手足以外にも、お腹・背中・頭など全身にあり、カラダの動きや姿勢の保持を担っています。
今、スマホやパソコンの画面を見ている時、どこの筋肉を使ってる感じがしますか?そんなことを言われても、日常の中で「今、ここの筋肉が働いている!」と感じることは滅多にないですよね。
どこか指や肘など、好きな関節を曲げたり伸ばしたりしてみて下さい。
動かそうと思った体の部位以外で動いた所はありますか?例えば、指を動かそうと思った時の手首の向きや肘の角度、肘を動かそうと思った時の肩や首まわり、足首を動かそうと思った時の膝や股関節など。
実は、特定の部位を動かそうと思った時、カラダ全体の筋肉が働いています。本当かよ!?とツッコミが飛んできそうですが、本当です。(※脳や脊髄、神経の麻痺を呈する方はその限りではありません。)
目で見て確認できる動きや、感じられる動きは少なく、動かしている部位の近くだけしか認識はできないかもしれません。
筋肉の『使っている(働いている)』『使っていない(働いていない)』の定義はとても難しいです。そこには【筋肉の働き】についてのイメージが関係しています。
関節が動いたら筋肉が働いていると感じますか?重い荷物を持ち上げたら筋肉が働いている感じがしますか?
立っている時、座っている時、それぞれ関節の位置や角度を保つように重力に抗して、筋肉の張力が働いています。
筋肉を使っている気がしなくても、筋肉は無意識下で働いてくれています。授業中や電車の中で居眠りをして、ガクっと頭や上半身が落ちる経験をしたことがありますか?ガクっと落ちるまでは筋肉が支えてくれていたんですね。「座っている時、足の筋肉は使っていないのでは??」と思う所ですが、脚やお尻の程よい【張力】で椅子から転落せずに姿勢を保持できています。
パーソナルトレーニングやヨガ、体操など様々なトレーニングで聞く言葉「〇〇に力を入れて」「△△の力を抜いて」という言葉は、
筋肉の働きを理解すると「〇〇に(いつもの張力よりも)力を入れて」「△△の力を(姿勢が保てる範囲で、または意識できる範囲で)力を抜いて」という意味が含まれているのが分かりますね。
なぜこの筋肉の働き、【張力】の理解が大切なのでしょうか?
あまり耳にしたことがない【テンセグリティ】という言葉ですが、筋肉の『張力』という働きについて理解するのにとても便利な言葉です。
この言葉はバックミンスター・フラーさんが作り、『テンション(張力)』と『インテグリティ(統合)』を合わせた造語です。このテンセグリティ構造とは、柱がなく、圧縮材(圧力が加わる物、例:骨)と引張材(伸び縮みする物、例:筋肉、皮膚など)からできた構造の物体を指します。(写真の物体では、木の棒が圧縮材、黄色の糸が引張材です。どの棒が折れても、どの糸が切れても形が崩れてしまいます。)
もともとは建築やアートなどに使われていた言葉ですが、世界中で最も複雑なテンセグリティ構造は『人体』であると言われ始めました。確かに柱はありません。骨はあるけれど、骨と骨は共にくっつく事なく、でもバラバラにもならないよう靭帯や筋肉、その他の軟部組織で覆われています。(※人体のテンセグリティ構造には所説あり、骨自体の構造がテンセグリティ構造、細胞一つの構造自体がテンセグリティ構造とも言われています。この記事では骨が圧縮材、筋肉が引張材として説明させていただきます。)
骨が圧縮材で、筋肉が引張材と考えると、一つの筋肉が過剰に働くと全体の形が変化する事がイメージできるでしょうか?一つの筋肉が働いているように見えて、まわりの全ての筋肉たちが張力(硬さや柔らかさ)を変化させて、全体の形が崩れないように働いてくれています。
さあ実際にイメージしてみましょう。
右手の手の平を上にして、『ちょうだい』するポーズをします。今なにも手の平に乗っていない時と、急にボーリングの球を手の平に乗せられた時。どんな違いがありますか?全身が揺れたり、右手の方向へ引っ張られるように腕や体幹が動くイメージ、その他にも右手以外の部分に力が入るイメージが湧くかもしれません。ちょうだいのポーズを一切動かさずにキープする時、足の指・足首・背中・頭・首まで全身の筋肉たちがポーズを保つことに協力しなくてはいけませんね。
「筋トレ等のトレーニングと何の関係があるの??」とお思いの方もいらっしゃるでしょうか?
ひとつの筋肉を鍛えていると思ってトレーニングをしている時でも、その動きが上手くできるように、姿勢(フォーム)がきれいにできるように、他の全ての筋肉たちが協力してくれています。
パーソナルトレーニングを受けたことがある方はよく『フォーム(姿勢)』を注意されませんでしたか?腰を痛めないように、首や肩を痛めないように。と、鍛える動きよりもフォームを徹底して指導されることも少なくありません。効率的に鍛えるだけでなく、関節や筋肉を壊さない為の全身の張力に無理のない姿勢でトレーニングするために必要な注意点なんですね。
自己流で筋トレやダイエットをして体を痛めた事がある方は、ぜひ〝 4.筋トレ中に使える「カラダ全体のイメトレ」方法 〟 を読んでみてくださいね。
カラダがどんなポーズで、どんな動きをしていても、体が安定するよう筋肉たちは私たちの意識や意図と関係なく働いています。
これさえ理解していれば、トレーニング内容はどんなものであれ『カラダ全体の形』、『どの部位の筋肉が張力0になったら形(姿勢・フォーム)が崩れるだろうか。』とイメージがしやすいですね。
実際の筋トレで、イメージトレーニングの練習をしてみましょう♪
①真っ直ぐに立って、頭のてっぺん~足先の距離をイメージします。身長分の長さですね。
②筋トレをするポーズをとります。腹筋やスクワット、腕立て伏せ、ダンベル上げ等、お好きなトレーニングの動く前(負荷をかける前)の姿勢で止まって下さい。この姿勢のまま、また頭~足先の距離をイメージします。
③頭~足先までの距離感のイメージをしたまま、体を動かしてみましょう。動かしている部分以外の他全体の張力(カラダが倒れないように安定させる力、グラグラせずに動きへついていく力)は感じられますか?
トレーニングの動きによっては頭~足の距離が縮んだり伸びたりすると思いますが(例:腹筋やスクワット等)、距離が変化しても頭~足先のイメージを保ちます。どのくらい距離が縮んだり、伸びたりしているのか意識して観察してみましょう♪
頭から足先までの『全体の距離感』を感じながらトレーニングするだけで、1カ所に掛かる過剰な負荷、または誤った負荷(例:反り腰の助長、関節に対する誤った方向への負荷など)を減らすことができます。また、鍛えている部分の他に全体を大きく感じておくことで、痛みや違和感に気が付きやすくなり怪我の予防にもなります。
①~③を実践した方の中でピンときた人もいるかもしれませんが、
全体を感じておくことで、常に背骨の姿勢に気を配るようになりませんか?ふだんのトレーニングよりも体幹(腹筋や背筋)に効いている気がする方も多いかと思います。
この方法は、ダイエットや筋力アップ(筋出力の向上)を目指す人におススメです。一カ所の関節や筋肉がパワーを発揮する時に、カラダ全体の他の部位たちみんなが協力してくれた方が出力が上がりますし、ダイエット目的の方であれば全身の筋肉を効率よく使えた方がシェイプアップが図れます。
・筋肉に対する誤った解釈やカラダを動かす際の不自然なボディイメージは怪我を生む恐れがある。
・筋肉は目に見える動きの他に【張力で保持する】という大切な役割がある。
・ひとつの筋肉を鍛えていると思ってトレーニングをしている時でも、その動きが上手くできるように、姿勢(フォーム)がきれいにできるように、全身の筋肉たちが協力している。
・頭~足先までの距離感をイメージをして体を動かすと、体全体の張力のバランスを保ったままトレーニングができる。
ぜひ、日頃のトレーニングにお役立てください♪